KAPPUNK物語 スピンオフ
「あれ?ここはどこ?」カッパンクは目を覚ましました。
そこはテトラポッド。人工の浜。重油と重金属の匂い。。
そう、そこは東京湾。
カッパンク自慢のキレイな緑色のお肌は、まるで有刺鉄線でスマキにされて、バールのようなもので何度もブン殴られたかのよう…血まみれです。
「いたたた…」
背中に無数に刺さった医療用廃棄物らしき使用済み注射器を抜きながら、カッパンクは必死にテトラポッドを這い上がりました。
すると…
「こんなとこにいたんだにゃー?ほれっこれでも着るにゃ!」
カッパンクが見上げると、身の丈2mはあろーかと思われる赤いロン毛の強面。手のひらには「愛」のtatoo。
Tokyo Hardcoreのキングではありませんか。
無造作に放り投げられたショットのレザーと18holeのDr Martinをみて、カッパンクの記憶が蘇ります。
そうです、カッパンクは遥か遠く高円寺から、こんなセシウムまみれの東京湾まで流されてきたのです。おかげで全身ズタボロ…着ていた服はズタズタに引き裂かれて丸裸。
「ズボンはないけど、当分は下半身裸でがまんするにゃ?」
カッパンクは「うん!」と、大きくうなずきました。
さあ行こう!キングの後をトコトコとついて歩いてゆくと、そこにはオール・スモークのプリウスが停車中。カーステからは、チャラいサーファーもどきを威嚇するかのごとく、爆音でMYBCが流れています。
「おいっ!カッパンク!あんま心配ばっかかけんぢゃねーぞ!」
へ?運転席からこれでもかってくらい男臭を漂わせながら、スキンヘッドのさらなる強面が出てきました。
「あ、あ、夜死魔くーん…」
ズタボロのカッパンクをギュッと抱きしめる夜死魔くん。朝日が二人の再会を祝福します。
「男がちょっと流されたくらいで泣いてんぢゃねーよ、このバカ!みっともねーからこれでもかけとけやっ!」
夜死魔くんはぶっつぶれた拳がバリバリ目立つ手で、優しくカッパンクの涙目をキャッツアイで覆い隠してあげました。
Punk Is Love...
「さぁ!いくにゃー!カッパンクに見せなきゃいけないものがあるんだにゃ!」
なんせカッパンクは下半身裸。股間丸出しでウロついてたら、また国家権力のかっこうの餌食となって、点数稼ぎに一役買っちゃいます。
こうして二人と一匹は、朝日の祝福を背に受けながら急いでプリウスに乗り込むと、師走の喧騒がウゼー都心へと爆走してゆきました。
「ほぇ?あれ…??み、みんなは?」
カッパンクがプリウスのスモーク越しに見る景色は一変してました。
ケンタッキーの前に溜まっていたゴミ袋のよーなCrustも、西口ロータリーで鼻に手をあててうろつくモヒカンも、大量のジョーダンを抱えて竹下通りを疾走する万引きスケーターも、もうどこにも見当たらないのです。
「時代はかわったんだにゃー」
キングがカッパンクの割れた皿をパチンとはたきます。
「まぁ、バブルと一緒にパンクも弾けちまったってことよ…てめぇウインド汚したらスマキにすんぞ、ごら!」
ハンドルを握る夜死魔くんは前のカリーナにパッシングの嵐。
カッパンクは水掻きをギュッと握りしめました。キングが覗き込むと、カッパンクの皿がみるみる赤くなってゆきます。
「お、落ち着くにゃ…パンクはまだまだ生きてるにゃ…」
すると割れた二つのさらがモリモリと盛り上がり、頭の真ん中で「パキーン」と音を立てて合体したではありませんか…真っ赤なトロージャンの出来上がりです。
「おい!キング!てめぇちっと暇なパンクに片っ端から電話しろやごらぁ!」
ニヤリとスマホを取り出すキング。
「おい!夜死魔っ!なーにが不況だぁ?そんなもんに振り回されて、なーにがパンクだ?糞食らえ!」
夜死魔くんはキングを振り返ってニンマリ。
「やっと戻ったなぁおい?カッパンク…」
法定速度をブッチギリ、甲州街道を吹き抜ける一陣の風。
「まずは新宿だ!占拠だ占拠!いや、建国だ!自主独立だ!!パンクというパンクを集めやがれ!こんなフヌケた世界、パンクで埋め尽くしてやれ!!」
「やってやんぞ!ごらぁ!」
こうして2人と一匹は歌舞伎町へと爆走してゆきます。
Punks Never Die!!
朝日眩しい五月雨がやさしく秋の訪れを告げる、夕暮れが桜色の空に蝉の声響く初冬は夜のことでした。
終わり